最低賃金の引上げ(2019.8.26時点予定)
◆最低賃金、全国平均901円に引上げ!?
厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会で、2019年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、公表されました(7月31日)。
今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は27円(昨年度は26円)引き上げた901円となり、最も高い東京都は1,013円(昨年度は985円)、それに次ぐ神奈川県は1,011円(昨年度は983円)と、初めて1,000円を超えることになります。
今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議のうえ答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定、10月以降に改定されます。
引上げ額が過去最大となる予定の今回の改定は、中小零細企業に厳しい状況を強いることになり、さらなる生産性向上が課題となってきます。
転勤をめぐる近時の報道と、配転命令権
◆AIG損保、転勤を廃止
AIG損害保険が、転勤の多い保険業界では珍しく、転勤を原則として廃止したと報道されました。一般に「転勤のある社員」と「地域限定社員」に分け、給与に1~2割の差をつける企業が多いところ、同社は「限定社員が格下の印象となり、優秀な人の出世の障壁になる」として、廃止に踏み切ったとのことです(日本経済新聞2019年7月17日付)。
◆転勤命令で騒動となったカネカ
一方、今年6月には、カネカが育休対応問題で炎上しましたが、そのきっかけは、男性社員が育休復帰後2日で転勤の辞令が下され、これを拒否したことでした。同社は「当社対応は適切であった」というコメントを公表していますが、世間からはその適法性ではなく、一連の企業姿勢を疑問視されることとなりました。
◆企業には転勤命令権が認められているが……
転勤拒否の法律問題を考えるうえで非常によく言及されるのが、東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)という有名な裁判例です。企業の転勤命令権を広く認めた判例として、以後の多くの人事・労務実務や、労働紛争に影響を与えています。
しかし、その事件発生は1973~74年、判決が1986年のことであり、最近では、ワークライフバランスなどの観点から、転勤の必要性は厳しく吟味されるべきという声も高まってきています(大内伸哉「キーワードからみた労働法」、日本法令「ビジネスガイド」2019年9月号掲載)。
◆厚生労働省も転勤見直しを促進
自社の転勤のあり方を吟味する際の手引きとして、厚生労働省が下記資料を公表しています。AIG社のように全面廃止するだけでなく、雇用管理の類型ごとの運用メニューとするなど、いくつかの例が示されています。
古くて新しい転勤問題。いまいちど、自社制度の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
【厚生労働省雇用均等・児童家庭局「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」(平成29年3月30日)】
女性就業者の活躍と今後の課題
◆就業者数における女性の割合は年々増加
2019年6月に総務省が発表した労働力調査によると、日本における就業者数は6,747万人となり、前年同月に比べ60万人増加しました。これは、78カ月連続の増加となります。
そのうち、女性の就業者数は3,003万人と、初めて3,000万人を突破しました。前年同月に比べ53万人増え、就業者全体の伸びの9割近くを女性が占めています。
また、女性就労者は、全体の44.5%を占め、毎年増加を続けています。
◆役職・企業規模別の女性の就業状況
2018年度の雇用均等基本調査(厚労省)によると、正社員・正職員に占める女性の割合は、26.0%で、各職種の割合は、一般職が46.5%と最も高く、次いで総合職33.8%、限定総合職11.9%となっています。
女性管理職がいる企業割合は、課長相当職以上の女性管理職(役員を含む。以下同じ。)がいる企業割合は56.3%(前年比2.2%増)、係長相当職以上の女性管理職がいる企業割合は63.2%(同2.6%増)です。また、係長相当職以上の女性管理職がいる企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は10.7%(0.1%増)、課長相当職は19.0%(同1.3%増)、係長相当職は21.7%(同6.8%増)で、役員を除くすべての役職において、2009 年度以降最も高い割合となっています。
企業規模でみると、おおむね規模が大きくなるほど、各役職の女性を有する割合が高くなり、5,000 人以上規模では、部長相当職の女性管理職を有する企業が74.4%、課長相当職の女性管理職を有する企業が93.8%、1,000~4,999 人規模では、部長相当職の女性管理職を有する企業が40.2%、課長相当職の女性管理職を有する企業が76.0%と、女性が活躍する環境が整ってきていることがうかがえます。
また、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は11.8%(前年比0.3%増)で、係長相当職以上の女性管理職割合は13.5%(同0.7%増)で、それぞれの役職に占める女性の割合は、部長相当職では6.7%(同6.6%)、係長相当職では16.7%(同15.2%)と、いずれも前回調査から上昇しています。
◆今後の課題
女性の就業率が上がり、管理職に占める割合も上昇してきているとはいえ、出産や育児で休職や短時間労働が必要になる女性は多く、彼女らが昇進する際、不利になりやすい現状は依然としてあります。また、男性の育児休業取得率も一向に上がらない理由として、「職場に理解がない」を挙げる男性は多いです。
今後、男女問わず、家庭への協力、就業率(労働力)の向上を目指すには、政府の施策だけでなく、職場での意識改革が重要になってくるのではないでしょうか。
9月の税務と労務の手続提出期限
[提出先・納付先]
10日
- 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
30日
- 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
- 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
- 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
- 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
[公共職業安定所]